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税理士によるコラム

昔はあったこんな節税~節税今昔物語~
2022.09.30 スタッフ

せっかく稼いだのに、税金でもっていかれてしまう…。

こんな思いをしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

誰でも税金はできるだけ払いたくないものですよね。

 

そんな時に検討されるのが節税です。

公に認められている節税もありますが中にはグレーなものや制度の隙間を付いたものがあり、以前は有効だった節税策がその後穴が埋められることで使えなくなったりしています。

  
今回はそんな節税をめぐる国と納税者の歴史を一部ご紹介します。

 

 【目次】

1.以前はあったが今はなき節税策

2.以前より使い勝手が悪くなった節税策

3.今年(令和4年)が最後の節税策

4.まとめ

 

1.以前はあったが今はなき節税策

 以前は使えたけれど今は使えなくなった節税策の一例です。

・賞与に係る社会保険料

 平成6年に創設された賞与に係る社会保険料の計算根拠となる特別保険料では、賞与に係る社会保険料率は給与に係る社会保険料率に比べ小さかったため、月々の給与を抑え賞与を多額に支払うことで社会保険料の負担を軽減することができました。これにより年間の給与額は同じでも支給方法を変えるだけで社会保険料の負担を大幅に軽減できる仕組みになっていました。

 しかし、平成15年に給与と賞与共通の保険料率を使用する総報酬制による徴収方法に改定されたことで対策されています。

・居住用賃貸建物への仕入税額控除の適用

 以前は住宅用の建物を建築した際に支払った消費税は仕入税額控除(支払った消費税が消費税額の計算に反映される)の対象でした。しかし、この消費税をめぐり、不正な方法が様々生まれました。

 その結果、令和2年の改正により住宅用の建物に係る消費税自体が仕入税額控除の対象とならない取引となってしまいました。

 このように、有効な節税方法が生まれる都度制度ごと改正されるため今まで使えていた節税方法が使用できなくなるということが、繰り返されてきました。

 

2.以前より使い勝手が悪くなった節税策

 今も使えるけれど以前に比べて要件が厳しくなった節税策の一例です。

・所得税の基礎控除の段階的な廃止

 基礎控除というのは、以前は誰にでも一律に付与された所得から差し引ける38万円の控除でした。租税における最低生活費のようなものでしたが、こちらは令和2年に改正があり所得に応じて48万円から0円へと段階的に減る仕組みへとなっています。

・相続税の基礎控除の縮小

 相続税の基礎控除も縮小されています。平成27年改正前は「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」でしたが、改正により「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」になりました。

 昭和63年の抜本改正以降、社会の変化に応じて相続税の基礎控除は改正を繰り返しており、平成27年の改正では基礎控除額が縮小されたため相続税を収めなければならない人が増える結果となっています。

・簡易課税制度の上限売上高の縮小

 簡易課税は消費税の計算方法のひとつで、売上高を用いて消費税の計算ため事務処理の手間が少なく簡便的な方法です。消費税が導入された平成元年の制度設立当初は2年前の売上高が5億円以下であれば対象でしたが、その後3回の改正のたびに対象となる売上高の上限金額が減少し、現在は5,000万円以下となっています。これにより、対象となる法人の範囲が年々狭められています。

 

3.今年(令和4年)が最後の節税策

 今年(令和4年)で終了する節税策としては、

・住民税申告不要制度

があります。

 これは、確定申告時に住民税の申告方法を任意に選択するという制度です。申告不要制度を選択することで、人によっては税金の金額を抑えることが可能です。こちらも改正され、来年(令和5年)以降は使えなくなります。これにより所得税の申告方法と住民税の申告方法が一本化され、

所得税が還付されるが住民税がその分高くなる方法にするか(総合課税)

または

配当金から引かれた税金を還付することをあきらめるか(申告分離)

のどちらかを選ぶ必要があります。

 

4.まとめ

 このように、税金は有機的なものなのでその時の社会状況によって内容も日々変化します。

現在も年間売上300万円以下の事業所得は雑所得として扱うのかどうかという議論が行われています。

これにより給与所得と事業所得の損益通算により節税する方法は今後できなくなるかもしれませんし、青色申告が出来なくなることにより税負担が大きくなるデメリットが発生する可能性があります。

 

 では一体どうすればよいのか、そう思った時こそが税理士の出番です。

 最新の税制の状況を理解し、最適な納税の解を得るために、是非私どもの力をお役立てください。

 

 

 

 

このコラムは作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。

      

                                    執筆者:阿久根咲希

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